アリ・アスター監督のスリラー/ホラー映画『ミッドサマー』・・・大学生のグループがスウェーデンの夏至祭に招かれて行く話。
どんな映画かうわさは聞くけど、結局ラストはどうなるの?
そんなあなたのために今回は『ミッドサマーネタバレ!結末の解説とラストの展開について考察してみた』というタイトルでお話したいと思います。
ホラー映画の結末って2種類ありますよね。
最後には悪の手から逃れられる、もしくは救いゼロで全員死ぬ、など。
この映画はどんな展開なのか、ネタバレつきで考察&解説したいと思います。
もくじ
ミッドサマーネタバレ!結末はどうなる?
☀️祝祭がはじまる☀️
公開が楽しみなホラー(?)映画パロディです#ポケ森 #ミッドサマー pic.twitter.com/lw1txkjlx7— 冬夏 (@utatteite) December 15, 2019
フィンランドの夏至祭では、祭りのハイライトに「魔女狩り」があるそうです。
といっても本当に魔女を処刑していた歴史があるのかないのか・・・現代は等身大のかかしを魔女に見立てて火をつけるそうです。
夏を祝い、悪を浄化して五穀豊穣を願うという意味があるそうです。
『ミッドサマー』のラストにも同じような儀式が登場します。
悪を浄化するための生贄の火あぶりです。
ただしミッドサマーのモデルになったカルト宗教は1つではなく、アリ・アスター監督がヨーロッパとイギリスの夏至祭からいろいろな要素を拾って創作した仮想のカルト集団なので、生贄全員が悪の浄化として焼かれるわけではありません。
ハルガ村で悪を浄化するための生贄として選ばれたのはダニーの恋人、クリスチャンでした。
ラストで熊の生皮を着せられたクリスチャンに「お前の死をもって悪を浄化する」と村人が告げるシーンがあります。
そして他に8人、精霊に捧げる生贄が選び出され、計9人の生贄が神殿ごと焼き払われます。
9人目の生贄に恋人クリスチャンを選んだのはダニーだった
最初の2人の生贄は、村の長老2人・・・この人たちは祭典2日目に崖から投身自殺をしてすでに亡くなっています。
次の4人は外部から夏至祭に招かれて参加したジョシュ、マーク、サイモン、コニー。
この4人も、ラストを迎える時にはすでに命を絶たれた状態です。
あとの二人は自ら志願した村人。
志願した村人の一人は、ダニーたちを夏至祭に誘ったペレの弟イングマールでした。
そして最後のひとりは、ハルガ村の夏至祭に古くから受け継がれる伝統として、メイ・クイーンが選びます。
今年のメイ・クイーンとなったのは、主人公ダニーです。
ガラガラで無作為に選ばれた村人がひとり、前に進み出て、その隣に、恋人ダニーを裏切ったクリスチャンが薬漬けの状態で運ばれてきます。
9人目はこの二人のうちどちらにするか?
選択を迫られ、ダニーはクリスチャンを選ぶのです。
神殿には、自ら生贄に志願した村人2人とクリスチャン、それからすでに命を絶たれたコニーの亡骸と、ジョシュ、マーク、サイモンの首をくくりつけた人形がそれぞれ並び、儀式通りに3人の村人が松明にともした火をかけます。
クリスチャンは熊の生皮を着たまま、神殿ごと炎に包まれました。・・・
クリスチャンが燃えていく神殿を目にしたダニーは初めは泣き叫んでいましたが、ふと周りを見ると、村人たちもまた狂ったように泣き叫んでいます。
全てを集団で乗り越えるというしきたりに従って、神殿の中から聞こえてくる悲鳴に合わせて一緒に泣き叫ぶ村人たちを見て、ダニーはふいに泣くのを止めるのです。
その時、ダニーの中にあった全てのモラルや死生観が、吹き飛んだのだと思います。
ミッドサマーの結末は爽快?
この映画の雰囲気はとても不思議です。
村も祭りの装飾も人々の衣装もとても美しいのに、この上なく残酷でグロテスクです。
しかも村人は誰ひとりそこに気を留める気配がありません。
どう考えても異様だし狂っているのに、その世界観に不思議と釣り込まれてしまい、観ているうちに馴染んで来てしまうのがこの映画の恐ろしいところです。
ラストで青空の下に燃え上がる神殿と、狂ったように泣き叫ぶ村人たちを見ていると、なぜか起きている全てを肯定したくなります。
ダニーの顔に笑顔が戻ってくる瞬間に爽快感を覚えるのは、彼女の気持ちに同調できる自分がいるからかもしれませんね。
ミッドサマーネタバレ!ラストの展開について考察してみた
白夜の祝祭で起こる惨劇…「ミッドサマー」場面写真&怪しい壁画が到着https://t.co/NvJgHrlEXR
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— 映画ナタリー (@eiga_natalie) December 8, 2019
夏至祭に訪れた大学生が、村に馴染めず次々に脱落していく中で、なぜ主人公のダニーだけは村に懐柔され、死を免れたのか?
それはダニーは家族を亡くし、帰る場所のない孤独な少女だったからでした。
家族の死という途方もない悲しみと絶望、恐怖。
地獄のような苦しみと恐怖の中で、風に舞う木の葉のように寄る辺なく、心折れた女の子がダニーです。
だからペレの「ここには本当の家族がいるよ。君にもそういう存在が必要だ」という言葉に耳を傾けたのです。
ハルガ村では、死は事も無げに当たり前のように存在していて、自分の親や兄弟が死ぬことを「心から祝福して」送り出します。
自ら恋人を死刑にした時、それまでのダニーを縛り、支えてもいたあらゆる価値観が吹き飛びました。
アリ・アスター監督は「ダニーは狂気に堕ちた者だけが味わえる喜びに屈した。ダニーは自己を完全に失い、ついに自由を得た。それは恐ろしいことでもあり、美しいことでもある」と解説しています。
ミッドサマーは自己改革と家族の在り方について描いた映画
実はアリ・アスター監督も、弟さんを亡くした後に恋人と別れるという体験をしていたそうで、ダニーはアリ・アスター監督自身のかつての姿を投影したキャラクターなんだそうです。
喪失感、絶望、そして再生というサイクルを映画で再現したんですって。
異様な村のしきたりに染まり、洗脳されてとうとう壊れてしまったダニー。
でもそこまで行って初めて自分に新たな境地を開くことができ(てしまっ)たんですね。
こんな狂った状況は現実に起きて欲しくはないけど、自分を支えている価値観が同時に自分を縛るものでもある、というのは理解できますよね。
どうしても吹っ切れない悲しみや行き詰まりがあったら、それまでの価値観を捨ててみると自由になれるかも。
ラストでダニーに笑顔が戻る瞬間、彼女はもう孤独ではなかったと思うんです。
クリスチャンの死も、家族の死も、それを止められなかった自分も、全てがありのまま喜びに変わったんだと思います。
なぜなら彼女の周りにはお互いの感情に共鳴し合える「家族」が大勢いて、「死」を責める人など一人もいないのですから。
アリ・アスター監督がこの映画で描こうとしたのは「自己改革」と「家族の在り方」らしいのです。
完成した映画を観た俳優一同の反応がやばい
実はこの映画に衝撃を受けたのは観客だけではなかったそうです。
何を隠そう、出演した俳優たち自身がショックを受けて、完成した作品を初めて観た後15分も沈黙してしまったというのです。
ジョシュ役を演じたウィリアム・ジャクソン・ハーパーは脇が汗でびっしょり濡れてしまったのだとか。
異様な儀式や凄惨なシーンの数々が繰り返し登場するこの映画は、出演する側にも大変なチャレンジだったようです。
主役のダニーを演じたフローレンス・ピューはこの映画で相当な心的ストレスやトラウマを体験したと明かしています。
<<海外批評協会賞、続々受賞!!>>
『ミッドサマー』(@midsommarjp)
フローレンス・ピュー🏆サンディエゴ映画批評家協会
☑️ブレイクスルー・アーティスト賞受賞https://t.co/8YPxJVaKqO🏆デトロイト映画批評家協会
☑️ブレイクスルー賞受賞https://t.co/KVXQPymkC3 pic.twitter.com/UypYijjR8k— ファントム・フィルム (@PHANTOM_FILM) December 10, 2019
そして当のアリ・アスター監督はというと、「もうホラー映画は撮らない」と宣言しているらしいです。
制作会社から「スウェーデンを舞台にしたホラー映画を撮って欲しい」という依頼を受けた時、アリ・アスター監督は最初、構想が全く浮かばないからと言って断ったそうです。
それからアイディアが浮かんだので引き受けたそうですが、自身の失恋の体験を投影した映画にした時点で、もう出し切った感があるのかもしれませんね。
いずれにしろ、この映画でアリ・アスター監督は「ホラー映画の巨匠」というタイトルを一層強める形になりました。
すでに観た方はさらなる考察を
コニーの死因は何だったのか?知りたい方はこちらもどうぞ。
まとめ
ふふふふ#ミッドサマー pic.twitter.com/3U32DcmSNI
— 三角コーエン兄弟 (@farSEIKATSUHOgo) December 12, 2019
今回は『ミッドサマー映画を考察!結末ネタバレとラストの展開について紹介』についてご紹介しました。
映画ミッドサマーは、壊れたドニーの心が浄化されて立ち直るというラストにハイライトがあります。
自分で恋人を処刑し、過去を清算するという結末には清々しい印象さえ受けるそうです。
家族を喪失し、恋人に裏切られたダニーが再生するまでの展開をネタバレつきで考察しました。
アリ・アスター監督は、もうホラー映画は撮らないと話しているそうですが、今回この作品で「アリ・アスター監督はホラー映画の巨匠」という印象をますます強くすることになりました。
本当にもうホラーは撮らないのでしょうか・・・次回作への期待が膨らみますね。
まだ観てないならおすすめにゃ・・・