テセウスの船意味をわかりやすく解説・人間の細胞と哲学のエピソードも

テセウスの船意味をめちゃわかりやすく紹介!
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日曜劇場『テセウスの船』が最終回を迎えましたね!

このタイトル『テセウスの船』について、ドラマのプロローグにギリシャ神話の解説が出てきますね。

しかしあれだけ見ても「?」の方、結構いらっしゃるのではないでしょうか?

今回はそんなあなたのために『テセウスの船意味をわかりやすく解説・人間の細胞と哲学のエピソードも』と題して、わかりやすく、そしてドラマとの相関関係を考察しながらテセウスの船の意味をご紹介したいと思います。

テセウスの船はギリシャ神話に出てくるお話の一つですが、そこから提起された『テセウスの船』問題は、哲学における1つのテーマとして太古の昔から議論されています。

人間の細胞がこの哲学とどんな関わりがあるのか、面白い話なのでぜひご覧くださいね♪

 

もくじ

テセウスの船意味をわかりやすく解説

初回のドラマのオープニングに解説されたギリシャ神話のナレーションはこうです。

最終回でも最後にナレーションだけ流れました。

『テセウスの船』オープニング ナレーション

ギリシャ神話にテセウスの船というエピソードがある。
戦に勝利した英雄テセウスの船を後世に残そうと、朽ちた木材は次々と交換され、やがて全ての部品が新しいものに取り換えられた。

さて、ここで矛盾が生じる。
この船は最初の船と同じと言えるのだろうか?

このナレーションの意味はわりと分かりやすいですよね。

簡単に客観的な答え方をするなら「部品が全て元と違うなら、同じとは言えない」となりますね。

テセウスの船は、英雄テセウスが「怪物ミノタウルス」を倒した戦で乗っていた船そのものだから価値があったのです。

テセウスが踏んだ甲板、テセウスが引き上げた帆布、テセウスの手がつかまった手すり、その時受けた波をわけて進んだ船体など。

テセウスと戦いを共にした部品の集合体そのものが伝説の船なのに、朽ちた木材から新しいものと取り換え続け、やがて全ての部品が入れ替わってしまった船を、果たして「テセウスの船」と呼べるのだろうか??

呼べないんじゃないのか!?

・・・それがこの『テセウスの船』という名の哲学的な問題です。

つまり、「個としてのアイデンティティとはどこで判断されるべきものなのか?」という疑問です。

 

『テセウスの船』は実在した!ギリシャ伝説の名残

ちなみに、なぜこの問題が哲学者の間で議論の的になったかといえば、当時アテネには、船そのものよりも、もっと『テセウスの船』伝説の名残りとしてふさわしい品物があったからでした。

それは、テセウスの船についていた30本の櫂(船を漕ぐオールのようなもの)です!

アテネの人々は、この30本の櫂も大事に保管していたのですが、櫂は船のような大きな建造物を支える必要がないものなので、傷んだからといって捨てたり、ましてや新しい物に変える必要などなく、保存しやすかったのだと思います。

一方で、『テセウスの船』として伝説のシンボルとなった船本体は、朽ちてしまうと崩壊するため、傷んだ箇所から新しい木材に(まぁ、ある意味躊躇なく)入れ替えていったのでしょう。

もしかしたら新しい『テセウスの船』には、朽ちた櫂の代わりに新しい櫂さえもしつらえてあったかもしれません。

さて、全ての木材が新しいものにすり替わってしまった時、これを『テセウスの船』と呼んでいいものかどうか、疑問を呈する哲学者が出てきました。

アテネの街にはこの船とは別に、「本物の」テセウスの船についていた櫂が30本、保存されていることは誰もが知っていたからです。

「これがテセウスの船だと言うのなら、あの30本の櫂はどうなるんだ?」というわけです。

 

哲学者アリストテレスの見解(四原因説)とは

議論が起こった当時(紀元前317年ー前307年)、アテネの街を収めていたのはかつてアリストテレスの弟子であったデメトリウスでした。

デメトリウスは哲学者でもあり政治家でもありました。

師匠のアリストテレスは、この哲学者たちの議論について「4つの視点から考えることが解決の助けになるのではないか?」と言いました。

これを四原因説というそうです。

すなわち

  1. 形相因・・・船の設計は元の船と全く同じなのかどうか?→YES
  2. 質料因・・・船の建築に使われた木材は元の木材と全く同じなのかどうか?→NO
  3. 目的因・・・何の目的で存在しているか、という理由は元の船と同じか?→YES「テセウスが乗った船」
  4. 動力因・・・誰がどのように船をつくったか、という点は元の船と同じか?→YES「同じ職人が、同じ技法と道具を使って作った」

そして

アリストテレス

どうかね?

4つの原因のうち3つはテセウスの船の元のものと同じだ。

質料因(船を構成している部品)だけが違っている。

これは『テセウスの船』と呼ぶにふさわしいものであろうか?

あとは皆で考えてみるが良い。

はーっはっはっはっは・・・(フェイドアウト)

と言ったのでした。

 

哲学者ヘラクレイトスの見解(ヘラクレイトスの川)とは

さて哲学者たちは議論を続けました。

哲学者A
4つの原因のうち3つが元の船と同じだったからといって、残りの1つの「使われている部品・木材」(質料因)が違っていたら同じとは言えないだろう!

だってそこが一番重要なポイントじゃないか?

哲学者B
いやいや待たれよ。

ギリシャには過去にも偉大な賢人ヘラクレイトスがこう書き記しておる。

「人々が同じ川に入ったとしても、常に違う水が流れている」と。

つまり、空知川は(←急に日本)常に空知川。

流れている水が違うからといってその川が空知川でない、ということにはならない、とかつて哲学者ヘラクレイトスは考えたのでした。

アリストテレスの時代からさらに100年も遡る、紀元前540年~480年頃の人でした。

哲学者C
たしかに、ヘラクレイトス先生の論理で考えるとあの船だって「テセウスの船」と言ってもいいのではないか?
哲学者A
うーん・・・、そう・・・かな・・・?

だって、そんなこと言ったら「中身が入れ替わっても客観的な認識が変わらないもの」なんて、世界中に溢れているのですよ!

 

テセウスの船を人間の細胞エピソードから哲学する

「中身が入れ替わっても客観的な認識が変わらないもの」。

その一番身近な例は、あなたです。

そう、この記事を読んでいる、あなたこそがその例です。

人間の細胞は、どんなに生命力の強いものでも10年は持たない、と言われています。

つまり生まれたての赤ちゃんが10歳になる頃には、身体を構成している全ての細胞が新しく入れ替わっているということです。

10年前のあなたからみて現在のあなたは、まさに『テセウスの船』状態なのです。

あなたは、前のあなたと「同じ」と言えますか?・・・深遠な問いかけですね。

また、こんな例もあります。

フィクションです。

 

脳細胞が全て入れ替わったらその人物は以前と同じと言えるだろうか?

紀元2200年の未来のお話です。

あなたは80歳になりました。

このところ免疫力も運動機能も衰えて来たので、最近普及してきた「脳細胞移植」治療を受けることにしました。

衰えてきた脳細胞に別の健康な細胞を移植して機能を改善する、というものです。

治療を受けるとあなたの運動機能や免疫力はめざましく若返りました。

さらに治療を続けていき、あなたは何十年も健康に若々しく生き永らえることができるようになったのです。

ある日クリニックに定期健診に行くと医師からこう告げられました。

お医者さん
あなたの脳は100%新しい細胞に入れ替わっていますね。

もう生まれつきの脳細胞は全く残っていませんよ。

あなたは生まれ育ったこれまでの記憶もしっかり維持できているので、どこがどう変わったかなど自覚できません。

しかしあなたの脳細胞は、今や生まれつきのものとは全く別の細胞にすり替わってしまったというのです。

さて、あなたは以前と「同じ人間」といえるのでしょうか?

これが「アイデンティティはどこにあるのか?」という『テセウスの船』問題の難しいところなのです。

 

ドラマ『テセウスの船』に起こり得るテセウスの船問題

流れている水が違っても空知川は空知川。

10年で体中の細胞全部が入れ替わっても、あなたは死ぬまであなたのまま。

同じ例は世界中に溢れています。

例えば、アイドルグループ『モーニング娘。』や『AKB48』。

メンバーが全員入れ替わってしまってもなお『モーニング娘。』や『AKB48』として存在し続けています。

箱根駅伝のチームはどの大学も卒業していく学生もいれば新しく入学する学生もいるため、数年ごとにメンバーはそっくり入れ替わります。

それでも強豪校はといえば「青山学院大学」とひとくくりに思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

日本国民も150年後には今存在している日本国民は総入れ替えです。

それでもその頃日本国籍を持っている人たちは同じ「日本国民」と呼ばれます。

おそらく現代のわたしたちとは全く違う生活様式や考え方、常識を持っている人たちでしょうが、それでも「同じ日本人」と括られているでしょう。

 

ドラマのエンディングが楽しみ♪

ドラマ『テセウスの船』にはどんなテセウスの船問題が出現するのでしょうか?

主人公の心(しん)は、お父さんに罪を着せた真犯人を見つけて事件を未然に防ぐでしょう。

でも過去を書き換えて未来に戻ったら、2020年の現代は全く違うものになっているはずですね。

家族構成は一緒でも、過去30年の生活がすっかり変わってしまったら、みんな性格も外見も何もかも、全く別人のようになっているはずです。

だから、事件を防いで未来に戻った時が一番楽しみですね。

わたしのイメージでは

A:心(しん)は未来に戻ると同時に過去の記憶が新しくすり替わり、突然、自信満々で成功した別人になってしまう。お嫁さんは上野樹里じゃなくて、もっと派手でイケイケの美女と結婚していて、街で上野樹里とすれ違っても気づかない。

もしくは

B:心(しん)が未来に戻ると、家族は心の知らない過去30年を生きてきた別人となっており、父親が刑務所に入っていた記憶を持つのは心だけとなり、記憶と現実にギャップがあり過ぎて心は発狂する。イケイケの美女のお嫁さんに「君はぼくの奥さんじゃない!」とわけのわからないことを叫んで精神病院に入る。

どちらかだと思います。フフっ。

管理人・かにゃ
過去の出来事が総入れ替えしちゃった未来ではどんなことが起こるのか、そこがドラマの真の見せ場と思うにゃ。

当たり前みたいなハッピーエンドじゃつまらないにゃん。フフっ。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか!

『テセウスの船意味をわかりやすく解説・人間の細胞と哲学のエピソードも』というタイトルで『テセウスの船』とは何なのか、どういう意味なのかをめちゃわかりやすくご紹介するよう努めました!

英雄テセウスが乗っていた船のパーツを全て新しく入れ替えた船は果たして『テセウスの船』と呼べるのか、アイデンティティはどこにあるのか?という哲学的な疑問でしたね。

人間の細胞も10年で総入れ替えされてしまうので、パーツが全部入れ替わっても客観的な認識が変わらないものなんて世界中に溢れています。

かといって、たとえば脳細胞が100%移植されたものになった人は本当に「以前と同じ人間」と言えるのだろうか?

それがこの問題の難しいところでもある、という例をご紹介しました。